税務デューデリジェンスとは?M&Aにおける目的・調査範囲・リスクを徹底解説!
税務デューデリジェンスは、M&Aにおける税務リスクを事前に把握し、適切な対策を講じるための重要な調査です。本記事では、その目的や調査範囲、実施手順、リスクについて解説します。
1.税務デューデリジェンスの基本概念
税務デューデリジェンスとは、M&Aにおいて売却側企業の税務リスクを評価するために行われる調査のことを指します。デューデリジェンスは、売却側が提供した情報の正確性を検証する目的で実施されますが、税務DDはその中でも特に「税務」に焦点を当てた調査となります。
具体的には、
税務申告の適正性
追徴課税リスクの有無
税務上の未払い負債の確認
繰越欠損金の適用可能性
税務調査の履歴や指摘事項
などを詳細に分析し、将来的な課税リスクを把握することが目的です。
税務デューデリジェンスの実施タイミング
税務DDは、M&Aプロセスの中で基本合意書が締結された後に実施されるのが一般的です。基本合意書は、M&Aの大枠を決定する重要な契約書であり、以下のような項目が記載されます。
法人名・所在地
M&A実施予定日
取引手法(株式譲渡、事業譲渡など)
譲渡対象の株式数や金額
支払い方法(現金、株式交換など)
デューデリジェンスの実施範囲と協力事項
基本合意書の締結後、買収側は税務DDを含むさまざまなデューデリジェンス(法務DD、財務DD、ビジネスDDなど)を実施し、M&Aの実行可否を最終判断します。
2.税務デューデリジェンスの目的と重要性
M&A(合併・買収)を成功させるためには、財務・法務・ビジネスなどの多角的なデューデリジェンスが不可欠です。その中でも、税務デューデリジェンス(以下、税務DD)は、M&Aにおいて重要な役割を果たします。その目的は、以下の3つに集約されます。
税務リスクの把握
企業価値の評価への反映
経営統合の事前調査
単に売却側の税務リスクを把握するだけでなく、適正な企業価値の算定や、経営統合のスムーズな実施に貢献するため、税務DDの実施はM&Aにおいて不可欠といえます。それぞれの目的について詳しく解説していきます。
税務リスクの把握
税務DDの最も基本的な目的は、売却側企業の税務リスクを特定することです。売却側企業が過去に提出した税務申告書や税務関連の記録を精査し、申告漏れや記載ミス、税務コンプライアンス上の問題点を洗い出します。
売却企業に税務リスクがある場合、M&A成立後に買収側がその責任を引き継ぎ、追徴課税や罰則のリスクが生じます。場合によっては、企業の信頼性が低下し、ブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性もあります。その結果、M&Aの投資回収が困難になり、取引そのものが損失を生む恐れもあるのです。
そのため、税務DDでは、以下のようなリスクが存在しないか入念に調査します。
過去の申告漏れや修正申告の履歴
税務処理の適正性(特に繰延税金資産や特別控除の適用)
海外取引における税務コンプライアンスの遵守状況
税務当局による過去の調査結果と今後の指摘可能性
税務DDを実施することで、こうしたリスクを事前に洗い出し、適切な対応策を講じることができます。
企業価値の評価への反映
M&Aにおいて、売却側企業は可能な限り高い売却価格を設定しようとします。しかし、その価格が税務リスクを考慮せずに設定されている場合、買収側にとって不利益となる可能性があります。
税務DDを実施することで、売却企業の税務リスクや潜在的な負債を加味した適正な企業価値を算定できます。例えば、過去の申告漏れが判明した場合、それを是正するためのコストが発生します。その影響を売却価格に反映し、減額交渉を行うことで、より公平なM&A取引が実現します。
また、税務DDの結果は、企業価値評価(バリュエーション)の根拠としても利用されます。具体的には、
税引後利益の見直し
繰延税金資産・負債の適正評価
将来的な税負担のシミュレーション
といった要素を考慮し、合理的な価格設定が可能となります。
買収側としては、不測の税務コストを回避し、適正な企業価値で取引を進めるためにも、税務DDの実施が欠かせません。
経営統合の事前調査
M&Aを成功に導くためには、単なる買収・売却だけでなく、その後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)を円滑に進めることが重要です。税務DDは、PMI戦略の策定にも大きく貢献します。
例えば、買収企業と売却企業の会計基準や税務処理方針に違いがある場合、統合後の税務戦略をどう設計するかを事前に検討しておく必要があります。また、以下のような課題を明確にすることが可能です。
グループ法人税制の適用範囲や影響
事業再編時の税務リスク(合併・分割・事業譲渡の最適化)
海外子会社や関連会社の税務コンプライアンス
税務負担の最小化を図る組織再編案の検討
こうした税務上の課題を事前に把握しておくことで、買収後の経営統合をスムーズに進め、M&Aのシナジー効果を最大限に引き出すことができます。
また、税務DDの結果は、財務DDや法務DDの結果と併せて総合的に判断されるべきものです。税務の観点だけでなく、M&A全体の成功戦略の一環として、包括的なデューデリジェンスを実施することが求められます。
3.税務デューデリジェンスの主な調査範囲
M&Aにおいて、税務デューデリジェンス(税務DD)は極めて重要なプロセスです。税務DDには多岐にわたる調査項目があり、調査対象の範囲や内容によって所要期間が変動します。本記事では、税務DDの主な調査範囲とその期間について解説します。
調査範囲
税務DDの調査範囲は広範であり、企業の税務リスクを網羅的に把握するために、以下のような主要な項目が調査されます。
税務DDの調査項目
| 税務DDの調査項目 | 調査内容 |
|---|---|
| 納税状況 | 法人税(法人住民税・法人事業税)、消費税、不動産取得税、登録免許税、固定資産税などの納税状況・滞納の有無 |
| 税務申告 | 過去の税務申告が適切に行われているかの確認 |
| 課税リスク | M&A後に発生しうる税務問題やリスクの特定 |
| 欠損金 | 繰越欠損金の有無とその適用可能性の確認 |
このように、税務DDでは企業の過去の税務処理を詳細に分析し、M&A後のリスクを最小限に抑えるための準備を行います。
調査期間
税務DDの一般的な調査期間は数か月とされていますが、これはあくまで目安です。調査する項目の種類や範囲によって所要期間は異なります。
特に、以下のような要因によって調査期間が長引く可能性があります。
海外子会社の有無:売却企業が海外に子会社を持つ場合、現地法人の税務調査も必要になるため、時間を要します。
税制の違い:海外企業の税制が国内と異なる場合、現地の税務専門家を起用する必要があり、追加の時間と費用が発生します。
調査対象期間の長さ:一般的に直近3年〜5年の税務状況が調査対象とされますが、企業の状況により調査対象期間が異なることもあります。
M&Aの成功には、適切な税務DDの実施が不可欠です。事前に専門家と相談しながら、優先すべき調査項目を選定し、効率的なデューデリジェンスを進めることが求められます。
4.税務デューデリジェンスの実施手順
M&Aにおいて税務デューデリジェンス(税務DD)は不可欠なプロセスです。税務リスクの把握と適切な企業価値評価のため、慎重かつ計画的に進める必要があります。本記事では、税務DDの流れを4つのステップに分けて解説します。
1. 専門家に依頼する
まずは、税理士や専門家に相談し、税務DDの依頼を行います。税務DDには専門的な知識が求められるため、適切なアドバイザーと契約を結ぶことが重要です。法務DDは弁護士、財務DDは公認会計士が担当するなど、調査内容に応じた専門家選びもポイントになります。
税務DDの費用は1日数万円からで、総額50万円~数百万円が目安となります。正式な依頼前に報酬体系を確認し、アドバイザリー契約を締結します。
2. 調査範囲を決める
契約締結後、専門家と協議し、調査範囲を決定します。税務DDの調査項目は多岐にわたるため、重要度の高い項目を優先的に選定することが推奨されます。すべての項目を網羅することも可能ですが、その分、時間と費用がかかるため、バランスを考慮する必要があります。
調査範囲の決定に際し、企業の状況やM&Aの目的を踏まえ、適切な範囲を設定することが成功の鍵となります。
3. 資料請求・調査
調査範囲が決まったら、売却側企業から必要な資料を請求し、本格的な調査を開始します。調査方法として、
データベースや財務書類の精査
現地訪問・直接確認
関係者へのヒアリング
などが挙げられます。特に、紙ベースの資料が大量にある場合や、売却側企業の従業員に情報を秘匿する必要がある場合は、慎重な対応が求められます。
従業員に知られないよう休日を利用して現地調査を実施するなど、M&Aプロセスを円滑に進めるための配慮が必要です。
4. 結果報告
調査完了後は、専門家が中間報告および最終報告を作成し、買収側へ提出します。報告書には、
税務リスクの評価
問題点とその影響
必要な対応策
などが詳細に記載されます。税務DDで問題が発覚した場合でも、すぐにM&Aが破談になるわけではありません。リスク対応策を検討し、条件調整を進めることで、M&Aが成功するケースもあります。
5.税務デューデリジェンスを実施しない場合のリスク
M&Aにおいて税務デューデリジェンス(税務DD)は、買収後のリスクを回避し、適正な企業価値を確保するために不可欠なプロセスです。しかし、税務DDを実施せずに買収を進めた場合、どのような危険性があるのでしょうか?ここでは、代表的な2つのリスクを解説します。
追徴課税のリスク
税務DDを行わずにM&Aを進めると、売却側の過去の税務申告漏れが見逃され、買収後に追徴課税が発生するリスクがあります。これにより、買収側の財務負担が増大するだけでなく、「追徴課税を受けた企業」としての信用低下にもつながります。
M&Aで事前調査を怠ると、目先のコスト削減が結果的に大きな損失を招く可能性があります。
M&A手法の誤選択リスク
M&Aには、株式譲渡や事業譲渡など複数の手法があり、それぞれ異なる税務上の影響があります。税務DDを実施しない場合、売却側の税務状況を正確に把握できず、最適なM&A手法を選択できないリスクが生じます。
例えば、株式譲渡において贈与税や相続税が発生するケースがあるため、適切な税務戦略を事前に検討しないと、想定以上の税負担が発生する可能性があります。
税務DDを実施しない場合、買収側は多大な税務リスクを負う可能性があります。追徴課税による財務リスクや、適切なM&A手法の選択ミスを防ぐためにも、事前の調査を怠らず、専門家と連携しながら慎重に進めることが重要です。
6.税務デューデリジェンス実施時の注意点
M&Aにおいて税務デューデリジェンス(税務DD)は、財務リスクを見極め、適正な取引を実現するために欠かせないプロセスです。しかし、計画を誤ると、調査の抜け漏れや不要なコスト増大を招く可能性があります。ここでは、税務DDを実施する際に特に注意すべき4つのポイントを解説します。
1. 調査範囲の明確化
税務DDの対象範囲は広く、すべてを網羅すると時間やコストが膨大になります。そのため、調査の優先順位を明確にし、M&Aの目的に沿った重要項目にフォーカスすることが重要です。
事前に専門家と協議し、具体的な調査項目や質問事項を整理することで、効率的かつ効果的なデューデリジェンスを実施できます。
2. 適切な調査期間
通常、税務DDでは売却企業の直近3〜5年の税務状況を分析します。しかし、過去に大規模な組織再編や税務リスクの高い取引があった場合は、さらに遡ることが望まれます。
特に、繰越欠損金の継承や税務調査の指摘事項を確認し、潜在的なリスクを洗い出すことが不可欠です。
3. 独立した第三者の起用
税務DDは、売却側・買収側双方に影響を与えるため、公正かつ客観的な視点が求められます。利害関係のある専門家では、特定の立場に偏った調査結果となる可能性があるため、独立した第三者の専門家を起用することが推奨されます。
顧問契約のある専門家ではなく、外部の税務専門家に依頼することで、公平な判断を得ることができます。
4. 国内外の税務の専門知識を活用
売却企業に海外子会社がある場合、その国の税制を熟知した専門家のサポートが不可欠です。各国の税制は異なり、日本国内の税務だけを基準に判断すると、見落としが発生する可能性があります。
国際税務に精通した専門家と連携し、リスクの特定と適切な対応策を講じることが、スムーズなM&Aを実現する鍵となります。
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